【2019/5/6】新時代にかける~平成から令和へ(7)LGBT 特別じゃない(中日新聞)
新時代にかける~平成から令和へ(7)LGBT 特別じゃない レインボーなごや共同代表 山口徳明さん(44)=名古屋市
同性愛者や性同一性障害者などの性的少数者(LGBT)を巡る社会状況は、平成の三十年間で大きく変わった。LGBTという言葉は広がり、同性カップルに結婚に準じる関係を認める自治体も。LGBTを支援する民間団体「レインボーなごや」共同代表として「LGBTが特別視されない社会になれば」と、令和の時代に願う。
LGBTの知人が多く、二〇一〇年八月からレインボーなごやの前身となる性同一性障害当事者のグループで活動。当時は「LGBTという言葉自体が特殊で、みんなが分かる言葉じゃなかった」。定例会で参加者同士の交流を図り、イベントなどで地道に理解を広げていた。
転機は一六年夏。男性に生まれたが普段は女性として暮らす有権者から、投票所で投票所で戸籍上の性別を確認されることへの「悩みを打ち明けられ、行政に改善を求める必要性を実感。団体名を現在の名称に改めて、投票所入場券や自治体が発行する証明書からの性別欄撤廃を求める活動を展開した。
「十年前なら、すぐに実現は難しかった。でもLGBTの概念が広がり、役所の対応も早かった」。これまで県選管などで申し入れが受け入れられ、時代の変化を感じている。今後は首都圏にも活動の域を広げる考えだ。
ただ、「いまは概念が独り歩きしている。LGBTはおもちゃじゃない」。メディアはこぞって特集を組み、LGBTを題材にした映画もあるが、誤った認識で作られ当事者を傷つける作品も。LGBTだと明かす「カミングアウト」を良しとする風潮にも、戸籍や見た目を変えて出生時と異なる性別に「なりきっている」当事者からすれば、「違う性別で築いたものを失いたくない人もいる。言うかどうかは、本人が決めること」と異議を唱える。
名古屋市が昨年12月に公表した性的少数者に関する意識調査では、回答者の1.6%が自分が当事者だと認めた。会社の同僚や学校の同級生にいても不思議はないのに、飲み会で独身の男女がいると交際を勧めるなど「男女のつがいが基本」という考えは変わっていないと感じている。
「隣の人はLGBTかもしれない。想像力を持ってほしい。いることが普通になればいい」 (松野穂波)
自分年表 1975年2月 名古屋市熱田区に生まれる 2010年8月 性同一性障害当事者のグループ「GID PROUD」として活動開始 11年12月 LGBTの当事者や支援者らが集うバー「Queer+s」を中区に開店 16年7月 団体名を「レインボーなごや」に改称。県選管に投票所での性別確認の撤廃を申し入れ 18年7月 自民党の衆議院議員杉田水脈さんの「LGBTは生産性がないので支援する必要はない」などとした発言を受け、自民党県連前で抗議活動 18年12月 中区栄で「LGBTの夢と現実」と題しシンポジウムとパレードを実施
エナジーワード:「腹は減っても戦は続く」 高校中退後、三十代ごろまで大阪の西成などで日雇い生活をしたが、お金が無く腹が減っても誰かが助けてくれるわけじゃないと感じたから。
気分転換:特にない。たまにカレーを持ち寄り、食べ比べる会をしているぐらい。
令和、こんな時代に:LGBTを特別視したり、カミングアウトを求める状況が無くなり、LGBTであることなんて「たいしたことじゃない」とみんなが分かってくれるといい。
『中日新聞』2019年5月6日愛知県内版