酒井徹さんのお話
皆さん、こんにちは、「レインボーなごや」の酒井徹と申します。 この「レインボーなごや」という団体、だいたい、どんなふうに活動をしてるかと申しますと、ここにいるエサマンという人間、クィアーズというLGBTミックスバーというんですかね、いわゆる、LGBTの人、わりかし、いろんな人が集うバーをやっておりまして、そこに、いろんな方が来ると。いろんな方が来て、人生相談から、いろんな悩みから、こんなことで困っている、愚痴、酒場に行ったら愚痴も出ますわね。そういった話を聞いてるなかに、いわゆる本人が解決しなければいけなかったり、心持ちの問題であったり、っていう件も多いわけなんですけれども。それは、やっぱり社会的な問題と違うかと。制度がおかしいんじゃないか、あるいは、ちょっと力を貸したら、ちょっと上手くいくんじゃないか、と。そういう意見もあるわけで、そういったことが出会った時に、店の代表であるエサマンと常連の人たちが力を合わせて、解決していくと、いうようなことを大体、週2やっております。
その中で1番最初に申し上げるのが、愛知県の蒲郡市という所でございまして、そこで、MTFの方ですね。トランスジェンダーの方で、戸籍は男のままになっているんですけど、女性として生活していると、という方の問題でした。で、これは、前々回の参議院選挙、前回の参議院選挙ですかね、その時に、この方が、うちのバー、政治好きの人が多いもんですから、「投票くらい行けよ」ということ言って、今まで、選挙とかあまり、行ったことないんですけれど、「みんな、そういうやったら、選挙、一つ、行ってみるか」と思って投票所に行ったんです。すると、皆さんご存じですけど、たいていの所は、投票所入場券というお葉書が来まして、それをパッと出して、「はい、本人ですね」ってやるんですけれども。そこに、男とか女とか書かれてるわけですよね。この方は、戸籍上は男、見た目は女ですけれども。戸籍上は男ですので、男と書かれてるわけです。しかも、名前も親が付けるもんですので、男だと思って名前が付いてますので、男らしい名前が付いてるんですよね。それを持って、選挙に行きますと「え?」ってなるわけなんですよね。それだけなら、アレなんですけれども。「○○○○君ですか」って言って、大きな声で、そういう風に本人確認をされたと。当然、選挙っていうのは、自分の住んでる地区の小学校とか中学校とかで行われるもんですから、近所の人が非常によく見てると。しかも、悪いことに、この人、小学校の目の前に住んでると。ということで、そういう人の前の所で、「○○○○君ですか?」みたいなこと言われて、「もう選挙なんかには行けん」と言うてました。だもんで、やっぱり、「その選管の対応が悪いやろ」ということで、「いっちょ、文句言いに行くか」ということで、蒲郡市の市役所、いえ、蒲郡市の選挙管理委員会、それから、その上部にある、愛知県の選挙管理委員会の方に、「こういうのは良くないんじゃないんですか」ということでお話を持って行ったわけであります。
蒲郡市の方は非常に対応が良かったみたいで、「あ、言われてみて初めて気が付きました。ありがとうございます。なかなか、そうですよね」と言って、おまけに、何か、直前にクィアーズがテレビで特集されていたんですけども。愛知県の選管の方に行った時にですね。「確かに、その対応、良くないかもしれないけど、やむを得ない部分があるのだ」というふうに、おっしゃったわけですね。何がやむを得ないのかというと、総務省の外郭団体が出してる、選挙の投開票の事務ノートという、選挙マニュアルみたいなものがあると、そこに本人確認のやり方として、こういうことが書いてあるのだと言って、3ページ目の3、選挙人が本人であるかどうかの確認はどうするのか、というところで、名簿の対象にあたっては、投票する選挙人が、入口で列をなしているからといって、選挙人の顔も見ずに、機械的に、入場券と名簿等と照合するようなことは絶対にしてはならない。次、単に入場券のみに頼ることなく、入場券・名簿等の記載内容と本人の申し立てることと、本人そのものをよく見比べて、性別はもちろんのこと、年齢的にも一致するかどうかを、よく確かめなければならないと。このようになっているのだと、というふうにおっしゃるわけですね。つまり、選挙の葉書と本人をよく、見比べて性別が一致するかどうかを確認せないかん。男と書いてあるのに女に見える、「何だこれは」ということは、絶対に確認せないかん。だから仕方ないんだと、というようなことをおっしゃるわけですね。
これに基づいて、当時の愛知県の選管のマニュアルです。投票用紙の交付っていうところの1番、右、注意事項の2番のところですね。これが愛知県のマニュアルだったんですけれども、選挙人名簿の正本による選挙人の確認は単に入場券等による照合のみなどではなく、性別はもちろん、年齢的にも一致するかどうか確かめ、成りすましによる不正な投票が行われることのないように、充分注意すること、と、このように書かれていると、というふうに言われたわけです。「こんなことされたら、トランスの人は選挙行きにくいやないか、おい」ということで、申し入れをしましたところ、5ページを見てください。
この前の衆議院選挙、変わりました。愛知県のマニュアル、投票用紙の交付、注意事項の2、同じ所を見てください。選挙人名簿の正本による選挙人の確認は、単に入場券等による照合のみでなく、次、年齢的にも一致するかどうか確かめ、成りすましによる不正な投票が行われることのないように、充分注意すること。その際、周囲に聞こえないように、小声で本人確認をすることと。よほど、大声で言うた、ということに文句を言ったのが効いたみたいで、このように、大変、人権に配慮した内容に変わった、ということであります。トランスジェンダーの方も行っても、性別が一致しないということをもって、本人確認には性別の位置は必要ない、というふうに変わりました。
こういう状況を変えられたら、愛知で変えられたことが、全国で変えられないことはないと、いうことですので、ぜひ、変えていきたいと、というふうに思っております。前回の衆議院選挙、このように、性別の問題は一致は問題にされないようになったわけなんですけれども、じゃあ、現実どんなふうに行われたかと、ちょっと、小牧市の事例というのを聞いたんですけれども。
小牧市で、MTFの方、男性の戸籍で女性で生活している方が行ったと、葉書には男と書いてあるんですけれども、それをすっと見せたら、それは本人確認には使用しないということで、窓口のところで「どうぞ」と非常にスムーズに行ったそうなんですね。非常にスムーズで行ったので、このまま行くかな、と思って、投票用紙を受取る所、皆さんご存じですかね、男の人が来たら、灰色のボタンをポチっと押す、女の人が来たら、ピンクのボタンをポチっと押すと、スーっと投票券が出て来て、これで、男性が何人、女性が何人が投票したか男女別の投票率を数えている。(自治体によって違う場合がある) 小牧はそういうことになっているんですね。そこで、その方が「あ、女性だな」と思って、ピンクのボタンをポッと押したところ、入口の方が「あー、違う違う、その人、男、男」
で、その後、「これ、どうしよう、次、男の人が来た時、女って押せば良いんじゃないの」って声まで本人に丸聞こえっていうね。確かに規則は変わったし、本人確認には使用しないというところは徹底されたんですけれども、趣旨が伝わってないのか、どうも、そういう対応もあった。ま、1県、1県、これから改善していただきたいなあ、というふうに思っているところでございます。
二つ目、「八百津町が性別欄を撤廃」というのがありますね。意見書を受け、性的少数者に配慮、印鑑証明書というふうにありまして。皆さん、印鑑登録証明書、ご存じだと思いますけど、実印の陰影を登録しておいて、で契約とかする時に、実印です、これ間違いありません、役所もそう言ってますので、と言って渡すんですけれども。これは、先ほど言った岐阜の八百津町というところの方なんですけれども、まあ、自営業をされていて、屋上にソーラーパネルを付けようと思われたらしいんですね。ソーラーパネルを付ける交渉を業者の方としてて、最後にじゃあ契約、ちゃんとした契約なんで、「印鑑証明をお願いします」と言われたので、八百津町に印鑑登録証明書を取りに行ったところ、そこにMTFの人だったんですけれども、男と書かれてたわけなんですよね。この方も、無茶苦茶、MTFであることを隠して暮らしているわけでもないんですが。いちいち、ソーラーパネルの外交員にまで、「実は私はこういう者でございますよ」と、いちいち言いたくないもんじゃないですか。なんで、こんなんに男と書いてあるのよ、実は名古屋市の印鑑登録証明書にはそんなの書いてないんですよね。印鑑に男も女もないわけですよね。男の印鑑女の印鑑ってあるんかよ、って話で。調べてみると、名古屋市では、もう何十年も前に60年位も前から、印鑑証明書にそもそも男女は書かれていないと。作った時から、別に性別なんて要らんでしょといって、最初からないんですが。全国、ほとんどの印鑑登録証明書には、まだ、あると。それは、「印鑑登録証明書に男女は要らんでしょ」と言いに行ったのが、この記事で、言いに行ったら、非常に何ていうか、きっぱりした町長さんで、「八百津っていうのは、八百津は人道の町ですから、前向きに検討とかでじゃなくて、やらなければなければならないことと思っております」とその場できっぱり、おっしゃったんですね。なんか、杉原千畝さん、ユダヤ人の命を救った外交官の生まれた所と言われている所らしいんですけれども。そういうことで、その場できっぱり、おっしゃって、これ、無くしていただくことができました。
他にもそういった形で、先ほどの田中さんも頑張ってくださったこともあって、各務原でも無くしていただきましたし、それから、岐阜の岐阜市の方にも先日、無くしていただいた。ということで、こういう、不要な性別欄というのは、やっぱり、無くしていただけたらなあ、というふうには思っています。
で、まあ、こういう制度を変えていくような活動とともに、後、3分くらいですので、軽くお話をしますが、やはり、いろんなLGBTの方が集まっていると、生活の問題というのは、すごく切実なんだな、と。世の中では、先ほどのゲイエリートじゃないですけれども。ゲイでバリバリ、稼いでいて、ファッションセンスも良くて、みたいなイメージが最近、強まっているんですけれども、世の中の主流の価値観に乗れない生活をしているということで、どうしても、そういうエリートではない、立場に陥らざるを得ない人もやっぱり多いっていうのも、実情なんだよな、というふうに思うわけですね。
で、そういった人たち、例えば、この方もMTFなんですけれども、トランスしました。その時に、声も女声にしようと思って、声帯の手術をしたら、声が出なくなってしまいましたと。今まで、いろんな所に勤めていたんですけれども、声が出ない状態で、いろんな所へ面接に行っても、全然、採ってもらえません、と。というようなんで、どうしようもないみたいな形になっているという人の障害年金の受給とか障害者手帳の給付のお手伝いをしてみたり。
あるいは、まあ、かなり古いゲイの方なんですけれども、昔そういった形で生活していってて、で、もう、蓄えも無くなったと、もう70、65になるのかな?あの方、というような人の生活保護の申請に同行したりと、というような活動というのも。何でも屋的に、これも、「レインボーなごや」の活動なのかな、と。
先ほどマサキさんの方が、複合差別の問題も言いましたけれども、お店でいろんな方、個々に、見て行くと、ゲイだから、トランスだから、じゃなくて、その人が抱えてる、付随的、付随的といっても、その人にとっては、そっちが問題なこともあるんですけれども、様々な問題を引き受けていかざるを得ないわけですね、好むと好まざるに関わらず。そういった問題を一つ一つ、その人が困っていることを、きちっと解決していく、そして、それが、単にその人のためだけじゃなくて、世の中の同じような境遇にある人の助けになっていく、ような活動になればな、というふうに思っています。これは、あとでね、シンポジウムというか、討論の時にも、また、具体的にお話しさせていただきたいと思いますので、また、よろしくお願いいたします。